2020-01-01から1年間の記事一覧

NEW DAY

* 「なんか仁美雰囲気変わった?」 「え!まさか彼氏!?」 瞳の急な質問に思わず言葉が詰まる。 「もしかしてこの前言ってた年下くん?」 新発田くんの事を思い出すと、ついニヤけてしまう。 「え、うっそ!付き合ったの!?すごいじゃん!おめでとう!!…

Footprint

「加藤さん、ちょっとすみません。先日依頼した資料で、数字についてなんですけど。日付部分が半角になっているのに、本文の方では全角になってるのって何か特別な意味があります?」 「あ、いや特に意味はありません。私のミスです。すみませんでした。修正…

自分が人生で一番見る事が多い文字というのは、自分の名前らしい。 自分の名前というのは、親が子供に贈る最初のプレゼントらしい。 それなら結婚して自分の名前が変わってしまうというのはどうなんだろう?あ、結婚して変わるのは名字か。つまり名前という…

愛しい人よ

「今日も元気にいってらっしゃい!」 由美が元気にそう言うと、番組はすぐに次の番組へと切り替わった。 「お疲れ様でしたー」 「お疲れー」 「お疲れ様でした!」 次々に由美に労いの言葉がかけられる。 「ふぅー、お疲れ様でした」 最後に自分で自分を労う…

Be myself

「えー、ご飯連れて行ってくれるんですかー!嬉しいですー」 「好きな食べ物ですかー。たくさんあるんですけど、ウニが一番好きですー」 「え!本当ですか?嬉しいですー!来週の金曜日楽しみにしてますねー!」 森実悠はそんなに好きでもないウニを、そんな…

I'm ALIVE

田上が席に戻ると、堀さんがニヤニヤしながら嬉しそうに近づいてくる、 「どうだった?その顔見る限りおめでとうって言っていいんだよな」 田上は少し気まずそうに、はにかみながら答える。 「そ、そうですね、はい。ありがとうございます」 「なんだよ歯切…

海を見てる

初恋みたいなこの胸の高鳴り 宝物よ 忘れたくない ねえずっと 失う痛みをこの胸が知るたび、怖くなってた、好きになる事。 三十六歳。 三十歳よりも四十歳に近い年齢。「彼氏いるんですか?」ではなく、「結婚されてるんですか?」と聞かれる年齢。周りの友…

七星球

「可愛いお嫁さんになりたいです」 将来の夢に大小なんてないはずなのに、私の将来の夢は確実に小だった。小学校卒業時に書かされる卒業文集の周りの夢たちは「プロ野球選手」「作家」「パティシエ」など大きいものが溢れていた。私のような規模の小さい夢を…

真珠の耳飾りの女

「先日提出していただいたプレゼンの資料ですが、専門用語が全体的に多いです。相手はファッションの素人という事を加味して月曜日までに修正お願い致します。 加藤」 日曜日の14時、半袖でも過ごせるような気温の中でダガヤサンドウと呼ばれる千駄ヶ谷と北…